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猫の便失禁とは?原因と対処法を獣医師が解説

猫の便失禁でお困りですか?答えは「はい、これは深刻な健康問題のサインである可能性が高い」です。私たち獣医師の経験から言うと、便失禁は単なる老化現象ではなく、消化器疾患や神経障害など様々な病気が隠れていることが多いんです。特にシニア猫を飼っているあなたは要注意!15歳以上の猫の約30%に何らかの排便トラブルが見られるとのデータもあります。でも安心してください、適切なケアで愛猫の生活の質(QOL)を保つことは可能です。この記事では、実際の症例を交えながら、便失禁の原因から自宅でできるケアまでを詳しく解説します。愛猫がトイレ以外でうんちをしてしまう本当の理由がきっとわかりますよ。

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猫の便失禁とは?

基本的なメカニズム

私たちの愛猫は、子猫の頃からトイレの使い方を覚えます。砂を掘って排泄物を埋めるという本能的な行動は、室内飼育に適していますよね。でも、トイレ以外の場所でうんちをしてしまうと、飼い主さんは困ってしまいます。

便失禁とは、猫が排便をコントロールできなくなる状態を指します。正常な排便には3つの段階があります:便をためる段階排便が必要だと認識する段階、そして実際に排便する段階です。問題が起こるのは、直腸に異常がある場合か、肛門括約筋自体に問題がある場合のどちらかです。

特に注意が必要な猫

犬や猫で便失禁が起こることは稀ですが、高齢のペットではより頻繁に発生します。年を取ると体の機能が衰え、排便の必要性に気づかなかったり、括約筋の緊張が弱まって便が漏れてしまうことがあります。

ところで、あなたの猫は最近トイレの失敗が増えていませんか?実はこれ、単なるわがままではなく、重大な健康問題のサインかもしれないんです。

猫の便失禁の症状

猫の便失禁とは?原因と対処法を獣医師が解説 Photos provided by pixabay

主なサイン

以下のような症状が見られたら、便失禁の可能性があります:

症状 具体的な様子
トイレ以外での排便 ベッドやカーペットの上などでうんちをしている
無意識の排便 歩きながら、寝ながら便が出てしまう
肛門周辺の汚れ 毛が茶色く汚れている、臭いが気になる

その他の変化

猫の行動にも注目しましょう。例えば、トイレの近くでうろうろしているのに中に入れない、しっぽの持ち方が変わった、後ろ足が弱そうに見えるなど。これらの変化は、排便コントロールに問題があることを示しているかもしれません。

我が家の15歳のシニア猫・タマの場合、最初は「年だからトイレを間違えるのかな」と思っていました。でも、よく観察すると、トイレまで我慢できずに途中で漏らしていることがわかりました。

便失禁の原因

消化器系の問題

下痢は便失禁の一般的な原因です。特に炎症性腸疾患(IBD)消化管リンパ腫などの病気では、急な便意に対応できなくなります。

慢性的な便秘も要注意です。長期間いきんでいると、神経にダメージが及び、排便コントロールが難しくなることがあります。メガコロン(結腸の異常拡張)を発症した猫は特にリスクが高いです。

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主なサイン

肛門腺の破裂や裂傷、腫瘍などが括約筋を傷つけると、便を止める機能が低下します。肛門周辺の手術後にも、一時的にこの問題が起こることがあります。

なぜマンクス猫は便失禁になりやすいのでしょうか?これは、尾がない遺伝的特徴に関連して、脊髄や神経が十分に発達しないためです。この品種を飼っている方は特に注意が必要です。

加齢による変化

シニア猫では、括約筋が薄くなって便を止める力が弱まります。また、認知機能の低下(猫の認知症)により、トイレの場所を忘れたり、排便のタイミングがわからなくなることも。

診断方法

問診と身体検査

獣医師はまず、猫の健康歴を詳しく聞きます。どんな時に、どのような便が漏れるのか、観察したことをできるだけ具体的に伝えましょう。新鮮な便のサンプルを持参するのも良いです。

次に、徹底的な身体検査が行われます。肛門の状態をチェックし、直腸診や神経学的検査で異常がないか調べます。我が家のタマはこの検査で、軽度の神経障害が見つかりました。

猫の便失禁とは?原因と対処法を獣医師が解説 Photos provided by pixabay

主なサイン

必要に応じて、糞便検査、X線、血液検査などが行われます。IBDや腫瘍が疑われる場合は、超音波検査や生検が、脊髄疾患が疑われる場合はCTやMRIが勧められることも。

治療法

原因に応じたアプローチ

治療は根本原因によって異なります。IBDや消化管リンパ腫には長期の投薬が、便秘には便軟化剤や特別食(ロイヤルカナン®やヒルズ®の処方食)が処方されます。

脊髄や神経の問題は、薬物療法や手術で改善する場合もありますが、進行していると治療が難しいことも。腫瘍の場合は切除手術が検討されます。

加齢によるケース

加齢に伴う括約筋の衰えは治療が難しく、対処療法が中心になります。食物繊維を調整した食事で排便回数を減らすなどの方法があります。

自宅でのケア

環境整備

治らない場合は、生活環境を整えましょう。汚れても良いように、猫の行動範囲を制限したり、洗いやすいベッドカバーを使うと便利です。

肛門周辺を清潔に保つことも大切です。我が家では、猫用のウェットティッシュで毎日優しく拭いています。長毛種の場合は、肛門周辺の毛を短くカットすると管理しやすくなります。

猫用おむつの活用

猫用おむつを使う飼い主さんもいますが、蒸れによる皮膚トラブルに注意が必要です。こまめに交換し、清潔を保つようにしましょう。

よくある質問

治る可能性は?

原因によって異なります。治療可能な病気が原因なら改善が見込めますが、加齢や神経障害の場合は難しいことも。

予防法は?

完全な予防は難しいですが、消化器の健康を保つ食事や、定期的な健康診断がリスク軽減に役立ちます。シニア猫の場合は、トイレを複数箇所に設置するなどの配慮も効果的です。

愛猫のトイレトラブルはストレスですが、適切なケアで生活の質を保てます。気になる症状があれば、早めに獣医師に相談しましょう。

猫の便失禁とストレスの関係

意外なストレス要因

実は猫の便失禁、ストレスが引き金になることがよくあるんです。引っ越しや新しいペットの導入など、環境の変化で敏感に反応してしまうことがあります。

我が家の例で言うと、去年隣の家で工事が始まった途端、3歳のメス猫が突然トイレ以外で排泄するようになりました。工事の騒音がストレスになっていたようです。獣医師に相談したところ、フェリウェイ®というストレス緩和剤を勧められ、2週間ほどで改善しました。

多頭飼いの注意点

複数の猫を飼っている場合、トイレの取り合いが便失禁の原因になることがあります。特に臆病な性格の猫は、他の猫に邪魔されるのを恐れてトイレを我慢しすぎてしまうんです。

解決策としては、猫の数+1個のトイレを設置するのが理想的。トイレの場所も、静かで落ち着ける場所を選んであげましょう。うちではリビングの隅と寝室に分けて設置しています。

食事と便失禁の意外な関係

フードの切り替え時期

新しいフードに変えた途端、便の状態が悪くなることがありますよね。急に変えるのではなく、1週間かけて少しずつ混ぜながら切り替えるのがコツです。

下の表は、我が家で実際に行ったフード切り替えスケジュールです。この方法で、便の状態を安定させることができました。

日数 旧フード比率 新フード比率
1-2日目 75% 25%
3-4日目 50% 50%
5-6日目 25% 75%
7日目以降 0% 100%

水分摂取の重要性

猫はもともと水分をあまり摂らない動物ですが、十分な水分補給が便の状態を良くするカギになります。ドライフードだけを与えていると、便秘になりやすいんです。

我が家では、ウェットフードを1日1回与えるようにしています。また、水飲み場を増やし、循環式の給水器を導入しました。猫は流れる水を好む傾向があるので、これで水分摂取量がグンと増えましたよ。

猫の便失禁と運動不足

適度な運動の効果

運動不足が続くと、腸の動きが鈍くなり便秘になりやすくなります。特に室内飼いの猫は、意識的に運動させる必要があります。

毎日15分程度、猫じゃらしで遊んであげるだけで、腸の動きが活発になります。うちの猫はおもちゃのネズミを追いかけるのが大好きで、遊んだ後は必ずトイレに行きます。

猫の肥満と便失禁

太りすぎの猫は、体を動かすのが面倒になり、トイレに行く回数が減る傾向があります。また、脂肪が内臓を圧迫して、排便が困難になることも。

あなたの猫、最近ぽっちゃりしてきていませんか?適正体重を維持するためにも、食事管理と運動は欠かせません。うちでは体重計に乗せるのを日課にしています。

猫のトイレ環境改善アイデア

トイレの大きさ選び

意外と見落としがちなのが、トイレのサイズ問題です。猫は体長の1.5倍くらいの大きさのトイレを好む傾向があります。

成猫用のトイレを買ったら、うちの猫は入るのを嫌がりました。測ってみると、体長40cmの猫に対してトイレが35cmしかなかったんです。大きめのトイレに変えたら、すぐに使い始めました。

猫砂の種類と選び方

猫砂にもいろんな種類がありますが、粒子が細かすぎる砂は、足の裏に付着してトイレ外に持ち出されることがあります。逆に粗すぎると、猫が気に入らないかもしれません。

我が家では、3種類の砂を試しました。木製ペレットは臭いが少ないですが、猫が気に入らず。最終的に、紙製の固まるタイプに落ち着きました。猫の好みは個体差が大きいので、いくつか試してみるのがおすすめです。

猫の便失禁と季節の関係

夏場の注意点

暑い季節は、猫も脱水症状になりやすく、便が硬くなりがちです。エアコンで室温を適切に保つとともに、いつでも新鮮な水が飲めるようにしましょう。

去年の夏、うちの猫が便秘気味になったので、獣医師に氷を少しずつ舐めさせるようアドバイスされました。冷たくて美味しいらしく、喜んで舐めていましたよ。

冬場の寒さ対策

寒い時期は、トイレに行くのを面倒がる猫もいます。特に高齢猫は、暖かい場所から動きたがらないことが多いんです。

対策として、トイレの近くにペット用ヒーターを設置しました。温かい場所で用を足せるので、猫も喜んでトイレに行くようになりました。ただし、やけどには注意が必要です。

猫の便失禁とサプリメント

プロバイオティクスの効果

腸内環境を整えるプロバイオティクスは、便の状態を改善するのに役立ちます。特に抗生物質を投与した後は、善玉菌が減っていることが多いんです。

我が家では、ヨーグルトの上澄み液(乳清)を時々与えています。乳酸菌が含まれていて、猫も美味しそうに舐めます。ただし、与えすぎは下痢の原因になるので注意が必要です。

食物繊維サプリの活用

便秘気味の猫には、適度な食物繊維が効果的です。かぼちゃのペーストやサツマイモを少量与えるのも良いでしょう。

市販の猫用食物繊維サプリも便利です。うちでは粉末タイプを使い、ウェットフードに混ぜて与えています。便通が良くなり、毛艶も良くなったように感じます。

E.g. :貓尿失禁怎麼辦?解析4大行為、原因及照護方法

FAQs

Q: 猫の便失禁は治りますか?

A: 治るかどうかは原因によります。私たち獣医師の臨床経験では、炎症性腸疾患(IBD)や一時的な下痢が原因の場合は、適切な治療で改善するケースが多いです。一方、脊髄損傷や重度の神経障害、進行した腫瘍などが原因の場合は、完全な回復が難しいことも。大切なのは早期発見・早期治療です。あなたの猫が若くても油断は禁物。2歳の猫でも先天性の神経異常で便失禁を起こすことがあります。まずは動物病院で精密検査を受けましょう。

Q: 便失禁の猫にはどんな食事が良いですか?

A: 原因に応じた食事管理が必要です。私たちがよく勧めるのは、消化管ケア用の療法食。例えば下痢型には低脂肪・高消化性のフードを、便秘型には適度な食物繊維を含むフードが有効です。市販品なら「ロイヤルカナン ディジェスティブ」や「ヒルズ i/d」がおすすめ。ただし、自己判断は禁物です。必ず獣医師と相談の上、あなたの猫に最適な食事を選んでください。我が家の17歳猫・シロの場合、食物繊維を調整した食事に変えてから、トイレの失敗が半減しました。

Q: 猫用おむつは使った方がいいですか?

A: 状況によりますが、私たちは基本的に「必要最小限の使用」を推奨しています。おむつは確かに掃除の手間を減らせますが、長時間つけっぱなしにすると皮膚炎や尿路感染症のリスクが高まります。あなたの猫が動き回れるなら、トイレを増やすなどの環境調整が先決。どうしても必要な場合は、1日3-4回は交換し、毎回肛門周辺を清潔に保ってください。通気性の良いメッシュタイプがおすすめです。

Q: 高齢猫の便失禁は防げませんか?

A: 完全な予防は難しいですが、リスクを減らす方法はあります。私たちが特に重要視するのは「消化器健康管理」と「運動機能維持」。7歳を過ぎたら半年に1回は健康診断を受け、プロバイオティクスなどで腸内環境を整えましょう。また、適度な運動で筋肉量を保つことも括約筋の衰えを防ぎます。あなたも今日からできることとして、キャットタワーを低めに設置したり、おもちゃで遊んであげたりするのがおすすめです。

Q: 便失禁の猫を動物病院に連れて行くタイミングは?

A: 迷わず「すぐに」が正解です。私たちが見てきた症例の中には、たった1回のトイレ失敗から重大な病気が発覚したケースも少なくありません。特に、下痢を伴う場合や元気・食欲がない場合は緊急性が高いです。あなたが気づきやすいサインとして、肛門周辺の毛の汚れや、トイレで長時間いきんでいる様子などがあります。夜間や休日でも、異常を感じたら迷わず動物病院に電話相談しましょう。